妊娠中の治療

妊娠中の歯科治療

妊娠中の治療

女性の一生の中で妊娠期は女性ホルモンの影響により、う蝕(虫歯)をはじめ口腔内にトラブルを起こしやすい時期です。ご自身の口腔内疾患に加え、歯周病菌・菌産生の炎症物質は、早産・低体重児出産の危険リスクとなり、う蝕菌は母子感染により生まれてくるお子さんのう蝕罹患リスクを高めることとなります。本来、妊娠以前より予防・治療はしておくべきであり、妊娠中の口腔疾患の多くは、きちんとした口腔管理が出来ていれば悪化することはありません。妊娠を期に、検診を積極的に受け、う蝕・歯周病などの疾患の有無と同時に予防の正しい知識と方法も、生まれてくるお子さんのためにも身につけていきましょう。

妊娠時に発現しやすい口腔内疾患

  1. 妊娠中の治療1・う蝕(虫歯)
  2. 『う蝕原性の母子感染』
    生まれたばかりの赤ちゃんの口腔内にはう蝕原性菌(mutans streptococci :MS菌)は存在しません。小児う蝕の始まりは、母親から乳児への唾液を介して伝播することが一番多いので、「母子伝播」・「母子感染」といわれます。特に食べ物をあらかじめ噛んで子供に与える「噛み与え」やスプーンやお箸を親子で共有する行為によって伝播します。母親がう蝕原因菌を多く持っていれば、赤ちゃんに感染する確率・感染する菌が多くなる可能性が高くなります。
    MS菌は生後19週~31週で定着しますが、特に2歳前に感染するとう蝕発症リスクは高くなってしまいます。

  3. 2・妊娠性歯肉炎・歯周炎
  4. 3・智歯周囲炎
  5. 4・口臭
  6. 5・口内炎
  7. 『歯周炎と早産・低体重出産の危険性』
    近年、歯周病に罹患した妊婦は、そうでない妊婦に比べて37週以前の早産や、2500グラム以下の低体重児出産の危険性が7.5倍も高くなるという衝撃的な報告がなされました。
    妊婦の健康リスクに喫煙があげられます。

    1日20本以上の喫煙者の自然流産の発生率は、非喫煙妊婦の2倍以上といわれますから、この数値を比べても歯周病が喫煙以上にハイリスク要因であることがわかります。
    歯周病は細菌感染による慢性炎症です。


    • 歯周病細菌・細菌酸性の炎症物質が増加

      妊娠中の治療
    •         
    • これらが血液を介して羊膜腔に拡延

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    • 胎盤膜の炎症、胎盤圧迫

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    • 子宮の収縮、子宮頸部の拡張誘発

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    •         ●早産

予防と治療

妊娠中の口腔内疾患は全身に影響を及ぼすことから、予防と治療は必須といえます。共通して言えることは、口腔ケアが行われ、“う蝕菌・歯周病菌の数”が少なければ、これらの疾患の多くは予防・軽減することができます。妊娠中は、今まで以上に口腔ケアが重要になります。

検診と予防

定期的に検診を受けることで、自覚症状のないう蝕・歯周病も早期に発見できます。プロフェッショナルケア(歯石除去など)でプラークバイオフィルムを機械的に除去し、口腔内環境を改善させていきます。リスク判定を積極的に受けることでう蝕にかかる危険度がわかります。ブラッシング指導を受け、正しいセルフケアを行う方法を習得し、予防関連器具、商品(フッ素、キシリトール)使用のためのアドバイスを受けることができます。う蝕菌の母子感染、歯周病菌と早産の関係などの口腔に関する知識・情報が得られます。

妊娠中の歯科治療について

妊娠中の治療
  1. 1・受診時期
  2. 原則的に歯科治療を受けて悪い時期というものはありません。ただし、つわり・流産・早産の危険性を考えると、比較的安定している時期が望ましいでしょう。

  3. 2・歯科治療に際して
  4. 母子手帳を提示して下さい。産婦人科医から注意を受けていることは歯科医師に伝えましょう。楽な姿勢で治療を受け、体調・気分が悪くなった時は遠慮なく申し出て下さい。

  5. 3・レントゲン撮影
  6. 歯科撮影は、性腺・子宮から離れており、胎児への放射線の影響はほとんどありません。地球上で1年間に浴びる自然放射線量は、日本でおおよそ2.3mSV(ミリシーベルト)です。同じ放射線量で、デンタルフィルムは150枚以上、パノラマは100枚撮影できることになります。また、デンタルX線装置では、従来のX線撮影での1/2~1/10の被爆量ですみます。さらに防護エプロンの使用でX線を1/100程度の減弱させるため、被爆量は限りなくゼロに近くなります。

  7. 4・治療内容妊娠中の治療
  8. 通常の歯科処置、例えば歯石除去、う蝕治療、簡単な外科処置は行うことが可能ですが、緊急性が無く、炎症を伴わない外科処置はやはり避けるべきです。ただし、出産までに放置すればさらなる強い炎症をきたすと思われる病巣・歯の処置は胎児・妊婦の方の状態を考慮した上で行うこともあります。

  9. 5・歯科用局所麻酔剤
  10. 妊娠中の浸潤麻酔や外科処置は最小限にとどめたいものです。ただ、急性症状で重症化招く場合、処置を行う上で、局所麻酔使用が必要となる場合があります。歯科領域で使用される局所麻酔薬(キシロカイン)は通常の使用量で催奇形性が認められるものはなく安全に使用できます。(この局所麻酔薬、無痛分娩にも用いられています。)むしろ疼痛によるストレスを考えると、安定期には適切に使用した方がよいと思われます。

  11. 6・服薬の影響
  12. 外科処置同様、やむを得ない場合のみ使用します。適切な使用時期、使用量、使用期間を十分考慮し、妊娠中や授乳中でも安全に使用できる抗生物質、炎症を抑える消炎鎮痛剤を用います。